認知科学
心臓に良いことは脳にも良い

心臓を労ることは脳のためにも大変良いことをご存じでしょうか? 血糖値、血圧、コレステロールに注意を払えば、脳の健康に配慮することにもなります。
糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満など、心臓の健康に良くない状態も認知症のリスクの増加に関連しています。
脳は細胞の塊です。1 つ 1 つの細胞は活動を続けるために豊富な酸素を含む血液を必要とします。そのような血液が心臓から送り出され、頭蓋底部の動脈を通り、そこから徐々に細くなる動脈を伝わり、毛細血管を介して各細胞に到達します。細胞への血流が不十分だと、細胞は弱まり、最後には死んでしまいます。
ご想像のとおり、認知機能の健康のためには、できるだけ多くの脳細胞を維持することが重要です。心臓のリスクに関連する行動の多くは認知症にも関連しています。喫煙、過度の飲酒、椅子に座ってばかりの生活、脂肪分や糖分の多い食べ物は、心臓と脳の両方にダメージを与えます。
心臓から脳細胞に十分な血液が送られていない場合、認知機能が時間と共に低下する可能性があります。特に注目すべきこととして、脳領域の血管の変化は記憶喪失と認知症を引き起こします。心臓がしっかり動いているということは、脳にとっても大変良いことなのです。
以前は、アルツハイマー病と血管性認知症は 2 つの異なる疾患であると考えられていました。しかし、現在では、それら 2 つの疾患が同時に発生していると認識されています。したがって、心疾患のリスクを減らすことは、認知症やアルツハイマー病のリスクを減らすことにもつながります。
今すぐ、心臓と脳を労り、運動、食生活、睡眠、リラックス、交友関係、脳トレに取り組みましょう。
これらすべての生活習慣を 一度に変えようとすると途方に暮れてしまうかもしれません。そのため、このプログラムでは認知健康プランを複数の生活習慣領域に分けています。領域ごとにいくつかのヒントを提供し、測定可能な小さな目標を設定することで成果を出しやすいようにしています。
習慣科学では、小さな目標をいくつか設定する方が習慣を変えやすくなると言われています。これまでの説明で心臓が脳に栄養を与えていることがお分かりいただけたでしょう。それならば毎日 1 時間運動しようと考える方もいるかもしれません。しかし、いきなりたくさん運動しても長期的な変化にはつながりません。毎日 5 分間の軽い有酸素運動から始めて、徐々に身体を慣らしていきましょう。これは、脳ケアプログラムで始めるすべての新しい習慣について言えることです。
レファレンス:
- Boehm Julia K., Chen Ying, Koga Hayami, Mathur Maya B., Vie Loryana L., & Kubzansky Laura D. (2018). Is Optimism Associated With Healthier Cardiovascular-Related Behavior? Circulation Research, 122(8), 1119–1134. doi: 10.1161/CIRCRESAHA.117.310828
- Carver, C. S., Scheier, M. F., & Segerstrom, S. C. (2010). Optimism. Clinical Psychology Review, 30(7), 879–889. doi: 10.1016/j.cpr.2010.01.006